「胃カメラって、苦しいんでしょ…?」
「以前つらかったから、もう受けたくない…」
そんなご不安の声を、私たちはこれまで何度も耳にしてきました。
胃カメラ検査は大切な健康チェックの一つですが、「オエッ」となる嘔吐反射(のどの反射)が強く出ると、検査がとてもつらく感じられるものです。
当院では、この嘔吐反射をできるだけ抑えて、少しでも楽に検査を受けていただける方法を日々考え、取り組んでまいりました。
そして今回、その取り組みが実際に効果を上げたことから、札幌で開催された第93回日本消化器内視鏡技師学会でも発表し、全国の医療現場とも共有いたしました。
■ 苦しさの原因「嘔吐反射」を、どうすれば抑えられるか?
胃カメラ(上部消化管内視鏡)を口から挿入する際、多くの方が経験するのが「オエッ」となる反射です。
これは体の自然な防御反応ですが、人によっては麻酔中でも強く出たり、目が覚めてしまう原因になることもあります。
特に、過去につらい経験がある方にとっては、それだけで検査に対する大きなハードルとなってしまいます。
■ 苦痛を減らすため、麻酔の使い方を見直しました
「誰も苦しまない胃カメラを目指して、何かできることはないか?」
そんな提案をスタッフから受け、当院では2024年7月~9月にかけて、麻酔の方法とタイミングの見直しに取り組みました。
いくつかの方法を試した中で、特に効果が大きかったのが次の2つです。
① 麻酔の説明をより丁寧に行うこと
麻酔薬(キシロカイン)について、「どう作用するのか」「どのように口に含むか」などを事前に丁寧に説明することで、患者さまの緊張が和らぎ、嘔吐反射が出にくくなる傾向がありました。
② 追加麻酔のタイミングを最適化すること
「麻酔が効いていないかも」と感じる前に、必要に応じて適切なタイミングで追加麻酔を行うことで、反射の強い方にもよりスムーズな対応ができるようになりました。
■ 結果、嘔吐反射が明らかに軽減されました
この改善を取り入れた前後で検査状況を比較したところ、
• 嘔吐反射が強く出たケースが大幅に減少
• 追加の対応が必要な場面も減少
• 検査全体がよりスムーズに進行
など、明確な改善が見られました。
患者さまの負担が軽くなっただけでなく、スタッフ側にも余裕が生まれ、より丁寧で安心できる対応が可能になっています。
■ 学会でも発表され、他の医療機関からも注目された取り組み
今回の取り組みは、院内だけにとどまらず、内視鏡技師学会で発表し、全国の医療機関とも情報を共有しています。
当院で実際に効果が見られた方法として、他施設でも参考にされる実践的な内容です。
発表後には、他施設のスタッフから「ぜひ導入したい」との声もいただいており、再現性や実用性の高い取り組みであることを実感しています。
また、苦痛の感じ方には個人差があり、大腸カメラでもつらさを感じる方が少なくありません。
当院では、胃カメラの改善で得られた知見を活かしながら、大腸カメラにおいても、より快適に受けていただけるよう工夫と改善を重ねています。
■ 「つらくない胃カメラ」を目指して、これからも進化します
当院では、単に検査をこなすのではなく、
「どうすればもっと快適に、安心して受けていただけるか」
を常に考えています。
今後も、医療としての質はもちろん、患者さまの体験としても“やさしい内視鏡検査”を提供できるよう、取り組みを続けてまいります。