十二指腸潰瘍とは
慢性的な炎症などによって十二指腸の壁が傷付き、粘膜下層よりも深い部分までえぐれている状態です。ピロリ菌感染によって起こる慢性的な炎症やNSAIDsという非ステロイド性消炎鎮痛剤の服用が主な原因で発症します。
腹痛、出血による貧血、黒っぽい血便などが主な症状で、腹痛は空腹時に起こりやすい傾向があります。潰瘍が進行すると穿孔といって十二指腸の粘膜に穴が開いてしまうことがあり、とても危険です。潰瘍を進行させないために、また再発を防ぐためには、ピロリ菌の除菌治療が有効です。
ピロリ菌は高齢者しか感染していないと思いがちですが、若年者も感染している方がいます。感染率は10代で10%、20代で20%などと年齢と同じと言われています。
原因
過剰な胃酸分泌によって十二指腸粘膜がダメージを受けて発症します。十二指腸は、粘膜固有層・粘膜下層・固有筋層・漿膜などから構成されていますが、ダメージが粘膜下層より深い部分に達すると十二指腸潰瘍となります。
ピロリ菌
十二指腸潰瘍の多くがピロリ菌感染によって起こっていると考えられています。ピロリ菌には幼少期に感染すると考えられています。周囲をアンモニアで中和することで強酸の胃という環境に生息できる細菌です。
非ステロイド性消炎鎮痛剤
ピロリ菌に次いで多い原因として、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)もあります。解熱鎮痛薬を服用して腹痛など胃腸障害が起こった場合には、速やかに服用を中止して消化器内科を受診してください
症状
腹痛
お腹の鈍い痛み、うずく痛み、焼ける痛みなどがあります。場所としては右上腹部の痛みが多いとされていますが、他の場所に痛みを起こすこともあります。空腹時や夜間に痛みが強く現れやすい傾向があります。
その他の胃腸症状
吐き気、胸焼け、ゲップ、食欲不振などが現れることもあります。
消化管の出血
潰瘍が進行して出血量が多くなると、下血、血便、貧血などを起こすことがあります。
穿孔
消化管の壁に穴が開くことです。早急に受診しないと危険です。
検査・診断
正確な診断のためには、胃内視鏡検査とピロリ菌感染検査が必要です。
上部内視鏡検査(胃カメラ)
胃カメラでは、胃だけでなく食道・十二指腸の粘膜もすみずみまで観察できます。進行度、傷の深さ、周囲組織の状態などを精密に検査でき、組織を採取して生検によりさまざまな疾患との鑑別やピロリ菌感染の有無を確認することができます。また、潰瘍からの出血が多いケースでは内視鏡検査時に止血処置もできます。
ピロリ菌の検査
採取した組織を検体として感染を調べる検査が可能です。検査法は染色と顕微鏡による観察、培養、試薬を用いる迅速ウレアーゼ検査などいくつかあります。また、血液や尿、便を用いた検査や、呼気を調べる検査もあります。検査方法は、保険適用できる条件などもありますのでご相談しながら最適なものを選択していきます。
十二指腸潰瘍の治療
薬剤療法
胃酸分泌を抑制する薬剤を6週間服用することで、80%以上が改善します。ただし、再発しやすい病気ですので、約1年間は薬を継続服用してきちんと治しましょう。
十二指腸潰瘍は胃潰瘍同様にピロリ菌感染と深い関係があることがわかっており、ピロリ菌除菌治療の成功により高い再発防止効果が見込めます。2種類の抗生物質と胃酸分泌を抑制する薬を1週間服用するだけですからお身体への負担もありません。再発を繰り返す場合や潰瘍が深く出血を起こしているケースでは除菌治療が不可欠です。
手術(出血時)
内視鏡検査で潰瘍からの出血を確認した場合、必要があればその場で内視鏡による止血処置が可能です。十二指腸潰瘍の場合、出血があっても90%以上は開腹手術を必要とせず、内視鏡での治療が可能です。